適応力   

米子から、今年も、たくさんの若い人が都会へ、あるいはいなかへ、と流出していきますね。

米子生まれ、米子育ちの強みは、柔軟な適応力だと、私は思っています。
山陰のほかの地域の人であればシリアスにかたまってしまうようなときでも、
米子人は笑いですべてをつつんでしまいます。
それがくそまじめな人には、ごまかしているとか、ふざけているとかいうように見えて、腹が立つこともあるみたいなのですが、そのダツリョクこそが、逆境や困難を乗り越える力になっているように、私には思えます。

たとえば・・・
松江市の通勤通学圏ぎりぎりの町での、私の知り合いの体験談です。
米子に生まれ育って、松江にお嫁にいったその人は、移住というか、娘さんがそこに転勤になったので、娘さんについてひっこしてきたのです。
旧郡部に住むのは、これが初めてでした。
今は、そこも隣の市に編入されて、市と名がついてますが。
娘さんが仕事をして、彼女がごはんのしたくや家事を担当していたわけですが、その日常生活がカルチャーショック続きでたいへんだったそうです。
いろいろ話してもらいましたが、いちばんキツかったという話がこれ。

町でたったひとつのスーパーがお休みの日は、近所の個人商店を利用するしかありません。
で、ある個人商店で買い物をしようとしました。
棚の野菜などを見ていると、腰の曲がったおばあさんが店にはいってきました。
そこで、彼女は、おばあさんの邪魔になるから、しばらくこっちで待っていてください、と言われたんだそうです。

そのおばあさんというのは、その個人商店の近所のご隠居さんです。
個人商店の経営者にとっては、昔からのつきあいですから、他のお客さんより最優先です。
他のお客さんは、そのおばあさんが来ると、店から身をひいて、経営者の家族とおしゃべりしたりしながら、おばあさんの買い物が終わるのを待つのです。
普通の人の買い物ではなく、気が遠くなるくらいゆっくりの買い物ですから、みんな、おばあさんの買い物が終わるのを、30分とか1時間とか、雑談しながら待つわけですよ。

この忙しいのに、おんなじお金払ってるのに、なんでなのよ、って、初めは頭にきましたけど、ここでは、そんなこと言っても通りません。
都会なら、ほかに店がいっぱいありますから、それならよそに行きますよ、ということになりますが、そこでは、その曜日は、その店しか開いていません。
よそにいけるものなら行ってみろ、ってとこです。
雑談なんてのんきなことにつきあってらんないわ、って思ったんだけど、外に出て待ってるのもへんだし、しかたなしにみなさんの話の輪にくわわって、おばあさんの買い物がすむまでの1時間くらいをやりすごしました。
経営者の話によれば、そのおばあさんは90才近くて、足腰が弱く、ひとりで町を散歩することができないので、この店と自宅が人生のすべてみたいなものなんだそうです。
毎日、毎日、この店の棚の、そんなに入れ替えもない商品を見て、買い物をすることだけが生きることなのだそうです。
そう聞いたらかわいそうじゃありませんか。

なんでも笑い飛ばしてしまえるような明るい性格の人ですから、こういうことにも慣れて、その町でもお友達がたくさんできたそうです。
松江に帰った今も、そのお友達と行き来して、泊めたり泊まったりとかもして、楽しそうですよ。
米子や松江の感覚からすると、え?!ってなことも頼まれたりするそうなんですけど、そういう人たちとうまくやっていくコツは、あまり気にしないようにすることだそうです。

いなかの人のいいところは、できたての野菜をくれることです。
彼女は、そこに遊びに行くときは、松江のお菓子を車にたくさん積み込み、みなさんに分けて、その代わりに獲りたての野菜やお花をもらって帰るのです。
彼女のところにそこの町の人が遊びにくるときも、おみやげを、たくさん持ってくるし、高校の受験のときなどに車を出してあげたりすると、山のようなお礼の品が届きます。
お花も買うとけっこう高いからね。
いつ訪ねても家中きれいなお花がいっぱいという彼女の生活は、物質的にというより、精神的にすごくぜいたく。

最近は、その町も、よそから来た人も多くなって、人情も、昔よりずっとドライになりましたけど、まだまだ、みんな親切です。
野菜をくれる人達も、お孫さんにお嫁さんを迎えるような年齢になられたそうですけど、親切な人には、いつまでもお元気でいてほしいものです。
高齢者には高齢者のよさがありますから、それをみんなでだいじにしていきたいものです。

お嫁に行っても、転勤しても、与えられた環境の中で、柔軟にしたたかに、
アメーバのごとく生き抜く米子人の適応力は類まれなものだと思います。
彼女も、松江にお嫁にきた当初は、ほんとうにたいへんだったそうです。
シリアスにがんばる力も、米子人は持っています。
ほんとに、米子人はがんばります。
人間好きだからがんばれるのだと思います。



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by friendlyclover613 | 2017-03-17 21:16 | 米子弁劇場 | Comments(0)

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